8月の歌舞伎座は「八月納涼歌舞伎」と題して、3部制で若手が主体となった座組で興行が開催されました。
第一部は中村児太郎と坂東巳之助、中村勘九郎の「ゆうれい貸屋」と松本幸四郎と市川染五郎の「鵜の殿様」が上演されました。
「ゆうれい貸屋」は2007年に、中村勘三郎、坂東三津五郎、中村福助が歌舞伎として初演しました。17年の時を経てその子供たちがそれぞれの親の役を勤めます。
「鵜の殿様」は2024年博多座で初めて上演されましたが、早くも歌舞伎座での再演が叶った注目作です。
楽しんで来ましたので感想などまとめておきたいと思います。
ゆうれい貸屋
ざっくりあらすじ
腕の良い桶職人の弥六(坂東巳之助)は、あくせく働いても大した稼ぎにもならず貧乏暮らしから抜け出せないんだから働くなんて馬鹿らしいと、昼間からお酒におぼれる始末。
このままでは弥六のためにならないとお兼は里へ帰ってしまう。
家主の忠告も、ご近所の気遣いも受け入れず独りぼっちになった弥六が行燈に火を入れると生前は辰巳芸者だった染次の幽霊が現れ、男に裏切られてその一族までも憑り殺したという身の上話をはじめ、弥六に惚れたから女房にしてくれといいだす。
そして、二人の暮らしが始まる。
染次は幽霊であることを利用して、豪華な酒肴を調達し、夜の間限定だけど家事もしてくれて、その上「ゆうれい貸屋」という商売を思いつく。
恨みを晴らしたい人に、幽霊を貸し出す幽霊派遣業。屑屋の幽霊又蔵、老人の幽霊友八とお時、若い女の幽霊千代(中村鶴松)と派遣要員を取り揃えて開業。
商売はうまく行き日々の売り上げは上々、それなりの金額が懐に入ってくる。
又蔵は「浮世もあの世も金、金、金ばかりでいやになった」とこの仕事辞めたいと言い出す。
そして、「何事も生きていてこそですよ」と何度も言いながら去って行く。
そして親族から手厚い供養を受けたから成仏できると爺と婆のゆうれいは去って行き、
若い娘の幽霊お千代は弥六に色目を使ったことが染次にバレて染次が野郎を憑り殺そうとしたことで、あえなく終了。
が、弥六が怒りを鎮めるために仏壇の鉦を打ち鳴らし、長屋のメンバーも参加して般若心経を唱えて染次も成仏。
弥六は又蔵の言葉に感銘してもう一度真面目に働き、生きて行こうと心を入れ替え戻ってきた女房のお兼と生きて行こうと誓うのでした。
思ったこと感じたこと
弥六の巳之助さん、半纏を一枚ひっかけただけの姿が小さくていじけてて、メンタルが弱ってる感じ、なんだか見捨てきれない男の哀しさがあってmoe。
なんだけど、商売が上手くいって懐にお金があるときのいやらしいおっさんになりつつある感じから、心を入れ替えて女房の方を抱いて再出発を宣言するところは半纏一枚の衣装は変わらないのに顔つきが晴れやかでキリっとかっこよくなる、立ち姿も大きく見える。うまいなー
女房お兼の新悟さん、長身で細身のお兼がいじらしくて「できた女房」だと言われるのもよくわかるし、自分が一緒にいちゃだめだと里へ帰る決意に芯の強さを感じる。
芸者の幽霊染次の児太郎さん、おっきな身体の児太郎さんの染次、弥六より大きい。
でも厚みのある身体の幽霊が自分の身の上を語り、その体を小さくして弥六を口説いているところが何ともかわいい。
薄幸感が無くていの
怖い幽霊の時の声と、女の声との使い分けも声の高さや低さ、太さや細さが、時にオネェっぽかったりもするのだが、声とサイズ感がこの世の者ではない感が出ていて良かった。
勘九郎さんの屑屋の幽霊又蔵、亡き勘三郎さんが出てきたのかと思うくらいにそっくりだった。
ひょっとしたら、本当に勘三郎さんだったのかも?
この「生きていてこそ」という言葉がきっかけで弥六も更生するのだが、がどうにも勘三郎さんの声に聞こえてどうしようもなかった。
若くして亡くなった勘三郎さん(三津五郎さんも)が、又蔵になって、他の幕に出る役者にも観客にも「生きていてこそ」と訴えかけているように思えて、胸が熱くなった。
爺の幽霊友八の寿猿さん、94歳舞台にいるだけでめでたい!!
娘の幽霊お千代の鶴松クン、親父ころがしやね。
家主平作の彌十郎さん、いるよなぁ、ああいうおやじさん。彌十郎さんにはぴったり!
伊勢屋の番頭の彌三郎さんが、名題に昇進されたということでお名前も変わり、師匠の彌十郎さんから坂東彌風改め彌三郎さんの名題昇進披露が行われました。
彌十郎さんの暖かさと懐の深さが伝わってくるいいシーンでした。
第一部 鵜の殿様
ざっくりあらすじ
夏の暑さを紛らわせるために腰元達と舞を楽しむ大名それだけでは飽き足りず召し使いの太郎冠者(松本幸四郎)を呼びつけ鵜飼の様子を語らせます。
大名は自分も鵜飼をやってみたくなり太郎冠者から指南を受けますが、面倒な言いつけをする大名への憂さ晴らしとばかりに、大名に鵜の役をやらせて太郎冠者はやりたい放題。
日頃の憂さを晴らすという舞踊の演目です。
思ったこと感じたこと
最高!めちゃめちゃ楽しい舞踊でした!
殿様染五郎クンの身体能力が高すぎて、綱で操られる鵜の姿が本当に綱で操られているかのように見えて、こんな動きよくできるな、若いもんなと思っていたら、
攻守入れ替わり、縄が太郎冠者の手から離れたところですかさず縄を手にする殿様染五郎。
今度は、太郎冠者の幸四郎さんが縄に引っ張られる、花道から舞台へ逆とび六法のように、テッテッテッと引き戻される太郎冠者、もちろん父幸四郎も負けてはいない。
「良い父上を持たれた」
そしてこの楽しい演目に花を添えていたのが、腰元達(市川笑也、澤村宗之助、市川高麗蔵)の鮎。
鮎を担当する腰元達は、鵜に食いつかれないようにすいすいと川を泳ぎ、時には縄で大縄跳びのようにぴょんぴょんと、手で表現するひれの動きとか、鮎ダンス最高!
それをなさる、笑也さん、高麗蔵さん、宗之助さんが鮎、めっちゃ鮎!かわいい(*^^)
こんな楽しい歌舞伎もあるって、こういうのを学校見学の生徒さんたちに観てもらいたいな。
とにもかくにも、あんな男前で、美しく、カッコいい染五郎クンの三の線を観ることができたのはこの夏一番の驚きですね。
この振れ幅は彼にしかできない!!
まとめ
長文にお付き合い下さりありがとうございました。
近いうちにオンデマンドでも配信されると思いますので、そちらも楽しんでいただけたらと思います。


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