2024年11月に明治座で行われている明治座十一月花形歌舞伎を観て来ましたので、その感想などをまとめておきます。
當月は中村屋を中心とした座組で、昼の部は「菅原伝授手習鑑 車引」「一本刀土俵入り」「藤娘」が、夜の部は「鎌倉三代記 絹川村閑居の場」「お染の七役」が上演されています。
11月6日(水曜日)の昼の部について、ネタバレ要素があるかもしれませんのでご注意ください。
菅原伝授手習鑑 車引
主な登場人物
・梅王丸
三兄弟の長男で菅丞相(菅原道真)の家来は実生活でも長男の中村橋之助で
血気盛んキャラ
・松王丸
三つ子の次兄で藤原時平の家来で二人の兄弟と対立するのは坂東彦三郎。
クールな感じのキャラ
・桜丸
三つ子の末っ子で皇弟斎世親王の家来は中村鶴松。
末っ子感あふれる柔らかな印象のキャラ
・藤原時平(ふじわらのしへい)
左大臣で、対立関係にある右大臣の菅丞相を陥れて、太宰府への左遷に追い込む悪い奴は坂東楽善さん。坂東彦三郎さんの父上です。
・杉王丸
4人目の兄弟ではなく、時平の家来のひとりで赤っ面(あかっつら)と呼ばれる赤い顔の化粧をしているのが市川蔦之助さん。
主君の威光を笠に着て、いやーなことを言いまくるいけすかん奴。
ざっくりあらすじ
チーム菅丞相の梅王丸と桜丸
チーム藤原時平の、松王丸、杉王丸
が、吉田神社の鳥居の前で行き会い、梅王丸と桜丸が主君の仇と、襲撃しようとしたところにボスがリアルに表れ、あまりの圧に気圧されてしまい、ボスに「この青蠅どもめがっ」と一括されますが、ボスが理解を示してこの場はお開きになる、というお話。
鶴松桜丸と橋之助松王丸のサイズ感が良かった!
鶴松クンが小柄なのは、桜丸のキャラ的にOK!、たいていは女形の役者さんが勤めるお役で鶴松クンが丁寧に、しなやかに演じていたのは良き印象でした。
掌の動きがしなやかで指先がきれい!
そして、そのコントラストで、橋之助梅王丸がダダーんと立派に見えたのも良きと思いました。
見得もばっちりキマったのですが、この日は大向こうさんゼロで全く声が掛からずでした。
私の心の大向こうで、
一番の見得のガッガッガッガッ、グホーの時に笑い声が聞こえたのは、なんだかなーでした。
まぁ、そういう事もある。
そして、彦三郎松王丸。
とてもハンサムな松王丸だと思いました。
そして熱すぎるくらいに熱い梅王丸に対し、クールな松王丸、彦三郎松王丸がまさにそれで解りやすかったなぁ、
衣装が赤地に梅の模様の梅王丸、白地に松の模様の松王丸、松王丸にさくっといなされる感じが良いですね。
MVPは蔦之助杉王丸
赤っ面の蔦之助杉王丸、センター三人が(桜、梅、松)がキメ、キメなのに対し、嫌な奴ながら芝居の進行を勤めていたのが杉王丸なんじゃない?っと思いました。
実に小悪な感じの赤っ面らしく演じ、美味しいところはセンターに繋ぐ感じの蔦之助杉王丸に感心しました。
一本刀土俵入
主な登場人物
・駒形茂平
幕開きは師匠に見放された取的(駆け出しの相撲取り)、お腹を空かせて取手の宿にやって来て酌婦のお蔦に、櫛かんざし巾着ぐるみをもらい江戸に向かい、10年後に渡世人となってお蔦の元にお金を返しに来る義理堅い男 中村勘九郎
・お蔦
取手の宿の酌婦、喧嘩騒ぎに巻き込まれた茂兵衛の身の上話を聞いて、一文無しの茂兵衛に全財産(巾着ぐるみ)とお金になりそうな品(串かんざし)をめぐんでやり、立派な横綱になるように意見する姐さん 中村七之助
・船印彫師辰三郎
お蔦の夫、お蔦の元を長く離れていたが、お蔦が今でも慕ってくれてるという噂を聞いて帰ってくる。が、お金欲しさにいかさま博打に手を出し追われる身となる男、坂東彦三郎
・波一里儀十
いかさま博打をした辰三郎を追う、博徒の親分。この人も元は相撲取り、茂兵衛を相撲勝負をする。歌舞伎から新派に転身した 喜多村緑郎
・堀下根吉
儀十親分の子分。他の子分たちよりはクールで、頭もキレるので親分からも目をかけられている男 中村橋之助
・老船頭 市川男女蔵
・若船頭 中村鶴松
取手に行くためには利根川を船で渡らなければならず、その渡し船の船頭さん。
ざっくりあらすじ
横綱になって母親の墓前で土俵入りをみせることを夢見る駒形茂兵衛、現実は取的という駆け出しどころか、師匠に見放され一文無しで江戸を目指しふらふらさまようところを、
取手の安孫子屋の酌婦(女郎さん)お蔦に、串かんざし巾着袋をめぐんでもらい「立派な横砂になるんだよ」と」意見をもらって、どうにか江戸へ行く。
10年後お蔦は行方知れずの夫辰三郎との間にできた娘と二人わびしく暮らしているところへ、いかさま博打で追われる身となった辰三郎が戻ってくる。
娘と3人でお蔦の故郷へ逃げようとするところへ、茂兵衛がやって来る。
茂兵衛は横綱にはなれなかったけれど、姐さんの恩は忘れず渡世人になり果てたものの義理堅くお金を返しにやって来たのだ。
辰三郎を追う博徒の親分波一里儀十とその子分堀下根吉and more
それらを一人で相手にし、辰三郎一家を逃がす茂兵衛、その時に決まるおなじみのセリフ。
「お蔦さん、十年前に櫛・簪、巾着ぐるみ、意見を貰った姐(ねえ)さんに、せめて、見てもらう駒形の、しがねえ姿の、横綱の土俵入りでござんす」
泣ける。タオルハンカチ必須!
歌舞伎を観ていて嗚咽を漏らしてしまったのは初めてかも?
そのくらい引き込まれたし、最後のセリフで完全に決壊した。
客席という人目をはばかる場所だったからなんとか平常心に戻れたけれど、そうでなかったらグスグス泣いてしまったかもしれない。
てか、泣いてデトックスしたかったな。
お隣の方も嗚咽漏らし気味で、お互いにやや気まずい。
ただ、辰三郎一家が花道の奥で何度も頭を下げつつ、鳥屋に入って行くところを見届けて、一安心。
そして、最後のセリフで涙したけれど、お隣の方と「あぁ、良かった、良かったですねぇ」と安心を共有できる空気感が客席のそこここにあって、幸せな気持ちになれた。
もう十分、充分、十二分。
勘九郎が全部持って行った
駒形茂兵衛は中村勘九郎さん、取的でお腹を空かしてふらふらしているすがたは、ぽわんとしてかわいい。
お蔦が金品をめぐんで、意見をしたくなる気持ちも解るダメな子っぷり。
横綱にはなれなかったけど、渡世人となって股旅姿で再登場する時、カッコいい!
取的時代は訛りもあってもっさりしていたけれど、渡世人になってからは立て板に水のごとき流暢な江戸弁で、セリフが気持ちいい!
お蔦姐さん
安孫子屋の2階で昼酒煽ってふらつきながらの登場。
男性の夜のお相手をする酌婦(女郎)のやさぐれた感じが声とセリフと姿から伝わってくる。
上手いなぁ、とにかく声が良い!
自分の事を、「あばずれ」とか「だるま」だとか卑下する。
「だるま」というのは金さえ払えばだれとでも寝るような酌婦という意味。
けれど、茂兵衛の夢には共感出来て、一文無しの茂兵衛に共感して持ち金全部と櫛やかんざしを2階から帯に紐付けて渡してやる優しい姐さん。
人の夢に共感できるってピュアな心を持ってる証拠じゃないかと
「姐さんはあばずれなんかじゃありませんよ」そのとおりだよ茂兵衛
三味線を弾きながら故郷の「おはら節」を歌うところに心まではやさぐれていないお蔦がいたような気がした。
10年後の茂兵衛との再会も娘のおきみちゃんが歌う「おはら節」がきっかけとなる。
訪ねてきた男があの取的の、腹減らしの、もっさりした茂兵衛だと気づく時のリアクションと声が大きすぎて、辰三郎を追う一味にばれちゃうんじゃないかとひやひやしましたよ。
辰三郎、なんでいかさま博打なんかしちゃうのよ
長い事家を空けていたから、まとまった金を持って帰りたかったという事らしいけど、帰って来てくれるだけでこんなに喜んでくれるんだから、追われるようなことしなければいいのに、
と思うんだけど、男前だから許す。
波一里儀十と堀下根吉の親分子分
儀十親分の喜多村緑郎、もともと背が高いのに一人だけ下駄をはいて出て来るから、頭一つ抜け出てる感じが親分の大きさが出ている気がした。
低く太い声も親分感ばっちり!
儀十親分も元々相撲取りの設定だからこのくらい大きさがあった方がイイね。
子分の根吉の橋之助がカッコいいじゃありませんか、腰のあたりがなんとも胸騒ぎの腰つきで、くるっと踵を返して下手に消えていくところなんかなんとも、ぐぐっとくるなぁ、
ここ1年くらいで3回くらい「一本刀土俵入」を見ていますが、この座組が私的には現状イチバン! もう一回観に行きたいな(*^^)
藤娘
中村米吉のソロの舞。
藤娘、
可愛くて、きれいで、愛らしい藤娘でしたが、
本当にごめんなさい、「一本刀土俵入」から帰ってこれなくて、あんまり残ってない。
あーごめんなさいごめんなさい、米吉さんのせいじゃないのよ
まとめ
2024年11月明治座の花形歌舞伎、昼の部の見物記録でした。
この演目の並びって、The歌舞伎の「車引」と、解りやすいストーリーでこういうのも歌舞伎なんだと思わせる「一本刀土俵入」そして、美しい、眼福の舞踊と、歌舞伎を満喫できる演目になっていますね。
まだまだ公演期間中ですし、チケットもあるようですから劇場にお運びいただけたらと思います。
長文にお付き合い下さりありがとうございました。


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