2025年3月の歌舞伎座は、三月大歌舞伎通し狂言「仮名手本忠臣蔵」と銘打って、歌舞伎座では12年ぶりに「仮名手本忠臣蔵」が通しで上演されました。
チケットはあれよあれよという間に売れていき、人気のキャスティングの公演は早々に売り切れの表示となりました。
上演期間も後半となった3月20日にやっとAプロを見物することができましたので、感想や思ったことをまとめておきたいと思います。
通し狂言仮名手本忠臣蔵
口上人形配役読み上げ
幕開き前に口上人形が定式幕の前に出て、出演俳優の名前と配役を読み上げるのですが、重要人物の読み上げの際に、「エヘン」と咳ばらいをします。
重要になればなるほど「エヘン」が大げさになり「エヘン、エヘン、ぶわっぶーーーわっエヘン」みたいになっていくのがなんともワクワク感をそそります。
口上人形の人形遣いと声をされていた役者さんの息がぴったりで、私の気持ちが高まりすぎて、菊五郎親父様や仁左様のところでは、すでに涙が・・・
大序
鶴岡八幡宮兜改めの場
幕が開くと舞台に並ぶ登場人物たち。
人形浄瑠璃を元にしている「仮名手本忠臣蔵」では、舞台に並ぶ役者さんたちはこの段階では人形というテイで、浄瑠璃が名前を紹介するとすくっと目覚めて魂が宿ります。
桃井若狭之助(松也)が美しすぎる。
人形の時も、魂が宿ってからもとにかくキリリと美しい、明るい朝葱色の衣装と黒の烏帽子もよく似合って、所作も美しい。
こういうのがきちんとやれるから三日月宗近も美しいんだなぁと思います。
師直に侮辱されて怒り心頭に達し、刀に手をかけてしまうところの怒りの表情はもっと見ていたいと思わせるくらいでした。
黄色い衣装の塩谷判官(勘九郎)は、少し哀愁を帯びていて、兜改めという大役を自分の妻が勤める事や、饗応役という天皇や上皇の接待役というお役目への緊張感を感じました。
そして、高師直(松緑)のいやらしさったら、もう憎々しくて、そんなんじゃ人妻は口説けないよと、不器用で情けない男なんだなと思ったり。
三段目
足利館門前進物の場
若狭之助はの家来の加古川本蔵(橘太郎)に、今度会ったら「師直のこと斬る」と宣言します。
本蔵も「バッサリおやりなさい」と言いながら、師直が足利館に登城する時間に先回りして、若狭之助の非礼を詫び、賄賂の金品を贈り、収めてくれるように頼みます。
それですっかり考えを変えて、顔を見るなり切りかからんばかりの若狭之助にひれ伏して謝りまくり、持ち上げます。
手のひらを返したようなオーバーアクションでの師直に対し「なんだこいつ」という感じの怒りの表情で部屋を後にする若狭之助
足利館松の間刃傷の場
とはいえ、賄賂のおかげで若狭之助にひれ伏して謝ったストレスからかとても機嫌がよくない師直。
その怒りをぶつける相手は塩谷判官。
ちくちく、ジクジク、ザクザク嫌なことを言って愚弄します。
いよいよ「殿中でござる」「刃傷」の場です。
最初はなんでこうなるのか要領を得ず、きょとんと感のある判官、徐々に怒りが込み上げてきて怒りの表情に、勘九郎判官がとてもとても良かった、表情だけで魅せてしまうところが堪らない。
この辺りは、当代勘九郎ならではのシャープさだと感じました。
そこに届けられる顔世御前からの文箱、中には色よくない返事の和歌。
いくら好きでも、その人の奥さんに宛てた恋文の返事をその旦那の前で読むかな?
明らかに自分の方が立場が上で、自分のものにできると信じてるんでしょうね、いけすかんやつ。
色よい返事と信じて読み進めるも、色よくない返事。
さぁ、師直は怒り心頭で、判官に向けて罵詈雑言を浴びせ、罵ります。
松緑師直、ぎょろ目をさらにひん剥いて、もう憎たらしいこと、さすが松緑!
腹に据えかねて刀に手をかける判官、いったん詫びを入れるもさらなる悪口雑言に耐えかねて刀を抜く、判官。
言わずもがなの、松緑、勘九郎のやりとりは見ごたえあり過ぎ!
止めに入る、加古川本蔵、(こいつが止めに入らなければ・・・)
ここで35分間の幕間でございます。
この日は休日だったせいか大向さんもにぎやかでしたが、私の席の隣の隣のおじさんがそりゃもう盛大に掛け声をかけるかける。
耳障りこの上なし!
だって自分の耳の近くで、大声で叫ばれたらびっくりもするし気分も悪い。
やだなーと思っていたら、歌舞伎座の女性職員さんが「周りの方がびっくりされるのでお控えください」と注意しに来てくれた!
ありがたや、ありがたや、思わず「ありがとうございます」と心の声が漏れてしまった。
その後少し静かだったけど、掛け声は止まりませんでした。
四段目
扇ヶ谷塩治判官切腹の場
上役である高師直に刀を抜き切りかかった塩谷判官。
そんなことをしたから御家は断絶、本人は切腹というお上からの裁きが下ります。
知らせに来るのは石堂右馬之助(梅玉)と薬師寺次郎左衛門(彦三郎)この二人の、品の良さと品の悪さの対比がなんとも良かったし、
通りのいい上品な声で話す石堂と床を踏み鳴らしてバタバタ歩き、野太い声でバカバカしゃべる薬師寺、静寂な空間を打ち抜くような彦三郎VOICEが響き渡って私は好きですよ、薬師寺。
判官は切腹を言い渡され、白装束でその場に。
大星由良助の(仁左衛門)の到着を待とうとするも間に合わない、いよいよ由良之助を待たずに、九寸五分を自分の腹に刺す判官、
もうこの時の勘九郎判官は、由良之助の顔を見ないまま死んでゆく哀しさにあふれて、思わず涙。
客席も、水を打ったように静かで、固唾をのんで見守っている。
集団の集中力!
そこに、由良之助が到着し、絶命直前の会話が交わされ、九寸五分を託される。
仁左様の見た目が麗しいのはもちろんですが、なんとも愛にあふれる表情と、握りしめた九寸五分を丁寧に外し、ふくさに包んで懐にしまう姿、もう泣かされました。
そして、今後のことを皆で確認し、判官を弔うための時間が与えられ、
ここでキビキビと活躍するのが原郷右衛門(錦之助)、先月も思いましたがピリッと〆るお役で、活躍される錦之助さん、本当にいいなぁと、
ついつい若手と、大幹部に目が行ってしまいがちですが、こういう方がお芝居を面白く見せてくれているんだと、ありがたさが解るようになった気がします。
ここで、斧九太夫(片岡亀蔵)のいやらしさがさく裂。
お金だけが目当てでこの場にいるオヤジ。
自分は歳だから今後の事は若い人たちで決めてくれと言いつつ、懐に入るお金の事しか言わない嫌な男、亀蔵さんがいやらしいくらいにハマってました。
扇ヶ谷表門城明渡しの場
本当はすぐにでも主君の仇を取りに行きたい若侍たち、だったら自分はここで切腹すると全員を思いとどまらせ、
潔く、屋敷を後にする塩谷の家臣たち。
最後に残り、九寸五分を空に見つめて「仇を討つ」誓いを新たにする仁左様がまたまた麗しい。
歌舞伎座で仁左様の大星由良助を拝見できるありがたさ。
浄瑠璃
道行旅路の花婿
早野勘平(隼人)は塩谷の家臣でありながら、主君の大事の時に腰元のおかる(七之助)とおデートしていたためにその場にもいることができず、城にも入れてもらえずという大失態を犯し、
切腹しようというところを何とかおかるに宥められ、二人でおかるの実家、京都の山崎に落ち延びようとしています。
おかるが顔世御前の文箱を言いつけ通りに届けなかったために、師直の怒りが大きくなり、判官が切りつけるというう悲惨な事件が起こってしまいます。
主君の大事に職場放棄していたふたり、特に勘平は武士として情けなく落ち込んでいる様子。
おかるは勘平と共に、自分の故郷へ向かえる嬉しさと、ふたりの様子は微妙な感じ。
七之助おかるも、隼人勘平も美しいのでもっと観せて~と言いたいところですが、
おかる、言いつけ通りに仕事しろよと言いたくもなりました。
ふたりのいいところに現れる鷺坂伴内(巳之助)、足がきれい。
師直の家臣でありながら、おかるに横恋慕する男ですが、勘平には勝てるわけないブサ男。
子分を連れて、おかるを強奪しようとやって来ますが、子分も含めて勘平にバッタバッタとやられ最後は退散していきます。
この二人の、超かっこいい勘平と全く情けない伴内、隼人と巳之助の息の合った所作が楽しめまして、私大喜びでございます。
最後は、巳之助がきれいにトンボを返って、自分で定式幕を引いてと、3の線もイケる大和屋のDNAを感じて幕となりました。
まとめ
まさかの大長文になってしまいました。
本当は昼夜まとめて書くつもりだったのに、、、長い文章にお付き合いくださりありがとうございました。
観劇がかなって本当に良かった!!


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