2025年3月の歌舞伎座は、三月大歌舞伎通し狂言「仮名手本忠臣蔵」と銘打って、歌舞伎座では12年ぶりに「仮名手本忠臣蔵」が通しで上演されました。
チケットがどんどん売切れていく中、やっとのことで3月20日にAプロを昼夜通しで観ることができましたので、夜の部の感想や思ったことをまとめておきたいと思います。
夜の部は五段目からです。
通し狂言仮名手本忠臣蔵
五段目
山崎街道鉄砲渡しの場
おかると共に京都の山崎まで落ち延びた早野勘平(菊之助)は、おかるの実家に身を寄せ、狩人となって生活しています。
雨の中狩に出て、鉄砲の火を消して困っているところで元同僚、塩谷の家臣千崎弥五郎(萬太郎)と出会い火を貸してほしいと頼みます。
勘平菊之助は、品があっていわゆる田舎の猟師とは違う感じ、元は侍という品格を感じました。
そして、弥五郎萬太郎は、とてもりりしくてキビキビとしていて好感度高く、中村萬壽家の教育の良さを感じました。
亡君の仇討ちのメンバーに参加できるかもしれない希望を見出し、あれやこれやと機密事項をしゃべりだし、弥五郎にたしなめられてしまう勘平、短慮なんだなぁ
が、菊之助勘平は品があって美しい。
山崎街道二つ玉の場
勘平と弥五郎は再会を約束し離れていき、舞台は転換して山崎街道。
勘平の義理の父、与市兵衛が先を急いでいるところ、提灯の火を消してしまいしばしの休憩中。
自分が50両もの大金を持っていることとその経緯説明となる独り言、
観客向けに独り言説明してくれているのはありがたいのですが、
お父さんそんなにしゃべったら、お金を強奪してくれって言ってるようなもんだよと思わずにいられない。
そこに稲掛の中から白い手がにゅっと出てきて、50両を奪い取り与市兵衛を殺し突き落としてしまう。
盗賊の斧定九郎(尾上右近)、出番は一瞬、セリフもたった一言「50両」
なかなかキマっておりました。
獲物のイノシシを撃ったはずが、斧定九郎を撃ってしまい、さらに懐の50両を自分のものにしてしまった勘平
菊之助の勘平は品があって好青年感が強いのだけれど、思いを遂げるために悪いとわかっていながら50両を自分の懐に入れる人間臭さをもっと感じたかった。
六段目
与市兵衛内勘平腹切の場
おかる(時蔵)は勘平(菊之助)が元の侍に戻るためにはお金が必要だと考え、身売りを決意する。
決意した割には、未練があふれかえるおかる。
その辺のいじらしさや健気さ、時蔵おかるからひしひしと伝わって来ました。
「良いことがあった」と紋服に着替え、刀も差してゴキゲンに千崎弥五郎らの訪問を待っている。
家の中には、一文字屋お才(萬壽)と判人(橘太郎)。
要領を得ない勘平と、母おかや(吉弥)のやり取りはちょっとまどろっこしくて、私は長く感じました。
そして、昨夜からの経緯が語られ、お才が与市兵衛に貸したものと同じ財布を見せ、
そこで自分が撃ち殺して、奪った財布は、与市兵衛の財布で中のお金は愛するおかるが身を売って得たお金だと悟り、
おかるは駕籠に乗せられて、祇園へと・・・自らピシャリと駕籠を閉じるところが哀しい。
これを言ってしまうとミもフタもないのだけれど、女房が旦那のために身を売るという大事な決意をするのに、なんで旦那は蚊帳の外なのかと、
与市兵衛は50両もの大金を持ちながら、夜道を独り帰るのか?
不用心極まりなくていろいろ言いたくなりますが、
そんなことは置いといて、お芝居は進みます。
自分が舅与市兵衛を殺したと思い込み、仇討ちへの参加も拒否されて絶望した勘平は、自らの刀で腹を切ります。
苦しみながらも仇討ちに参加したい一心での事だと話し始めます。
それを聞いた不破数右衛門(歌六)と千崎弥五郎(萬太郎)が、与市兵衛の亡骸を確認し、死因は刀による傷だと判明し、勘平の無実が明らかになる。
しかも、鉄砲で撃たれた斧定九郎の死骸も上がっており、勘平は舅の仇を討ったとして、仇討ちの連判状へ血判を押すことを認められる。
良かった、良かったね勘平。
この時の勘平の死にざまも泥臭くなくて、終始品があるのも菊之助勘平のらしいところだなと思いました。
七段目
祇園一力茶屋の場
世間の目を欺くために、祇園で遊び倒す大星由良助(愛之助)、無事のご復帰おめでとうございます。
顔に傷が残っていたりしたらどうしようかと心配していましたがそんなこともなく、表情や動きもしっかりしていて安心しました。
おかる(時蔵)が妙に色っぽくなっていて、すっかり遊女で、鏡で由良之助の手紙を読んでしまうところなんてエロいくらいで、襲名から1年弱、すごい進化だなと、
由良さんが酔っぱらって寝ているところで、吉右衛門さんの事を思い出してしまいました。
この場ではおかるの兄寺岡平右衛門(巳之助)が良かった、足軽っぽいドタバタした感じと、仇討ちに参加したいまっすぐな心、妹のおかるを思う兄の心、
いろんなものが、溢れかえっていい奴だなぁと思った。
仇討ちに参加するための功績作りに、妹のおかるに手をかけようとしたところで、由良之助が「心底見たり!」と、参加を許し、おかるも無事で何より。
由良之助の嫡男大星力弥(左近)、きれいな顔立ちで動きも良くて立派な侍に成長している感があって良いな。
師直側に寝返った斧九太夫(片岡亀蔵)がスパイとなって一力茶屋に潜伏、相変わらずの虫の好かない親父ぶり、
十一段目
高家表門討入りの場
いよいよ討ち入りの時。
平右衛門がこん棒みたいなので、門扉を破壊!
やった!活躍してる!
高家奥庭泉水の場
寝込みを襲われた師直家、寝間着姿で戦う武士、逃げ惑う女中たち、
奥庭の池では、女の姿をして逃げようとする小林平八郎(松緑)と竹森喜多八(坂東亀蔵)の一騎打ちに、
かなりハードな殺陣で、さらに喜多八は池に落ちたりまた上がってきたりとかなりの運動量、そしてお見事な動きで関心しました。
高家炭部屋本懐の場
そしていよいよ、師直発見!
すっかりおじいちゃんになって、よぼよぼしています。
判官に血が付いた九寸五分を突き出し、切腹するように迫る由良之助、
その九寸五分で切腹すると見せかけて、切りかかる師直。
そこを「御免」と切りつけ、判官のお位牌の前に差し出される師直の首。
良かった、良かった! すっきりした!
引揚げの場
舞台の上には大きな橋、花水橋。
橋の向こうから、本懐を遂げた塩谷の家臣たちが上ってくる。
槍の先に、師直の首をぶら下げた平右衛門の姿もあって、ジーンとくるシーン。
壮観!
そこへ、馬に乗った服部逸郎(菊五郎)が登場、無事に本懐を遂げた家臣たちを褒めたたえ、菩提寺までの安全なルートを教え、
全部持っていかれました。
セリフ明瞭で、声に張りと艶があって、馬はピカピカで、
この時Bプロの夜の部のチケットが取れていなかった私は、仁左様と並び立つ姿を拝見しなければと心に強く誓いました。
皆が引揚げ、舞台に一人残った由良之助が万感の思いを込めて九寸五分をかざすシーン、責任を果たし、安どしている様子を感じました。
まとめ
塩谷の家臣の皆さん、無事に本懐をを遂げられて何よりでした。
Aプロを拝見している時点では、Bプロのチケットが取れていなかった私、でもやっぱり仁左様の由良助はコンプリートしたい、隼人の斧定九郎は観たいと思いました。
そして、天使の羽が舞い降りてきました。


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