2025年9月、東京銀座の歌舞伎座で開催された「秀山祭九月大歌舞伎」の夜の部を観劇してきました!
今年は『菅原伝授手習鑑』の通し上演となり、主要な役どころをダブルキャストで上演し、芸の継承を感じる興行でした。
この記事では、「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部について観劇レポート形式でお伝えします。
菅原伝授手習鑑 夜の部 Aプロ
車引き
菅丞相(菅原道真)が都から大宰府へ左遷された後のお話。
ここに出てくる梅王丸、桜丸、松王丸は菅丞相に仕える白太夫を父に持つ三つ子の兄弟で、
松王丸は藤原時平に、梅王丸は菅丞相に、桜丸は斎世親王に仕えています。
京の都は吉田神社近くで、行き会う梅王丸(市川染五郎)と桜丸(尾上左近)「話すことあり」「聞くことあり」とお互いの近況と主人の苦難の様子を語り合います。
梅王丸の主人は流罪に、桜丸はそのきっかけを作ったわけですからそりゃ話すことも聞くことも大いにありますわな。
そこに「かぁーた寄れ、かぁーた寄れ」と棒のシャリン・ドンという音と共に歌舞伎座中に響き渡るような立派ないい声で金棒引藤内(尾上菊一郎)が現れます。
菊一郎さんの声、立派だわ、響き渡るわ、実にカッコいい!!
要は、「どけどけ、道をあけろ!!」というわけですね。
牛車に乗ってやって来るのは憎っくき藤原時平(松本白鸚)だということで牛車を襲撃する梅と桜、
梅は飛び六法で、桜は颯爽と花道を吉田神社へ向かって駆け出し、時平の牛車を襲撃する。
そこへ、止めに出てきたのは松王丸(松本幸四郎)。
牛車がパッカーンと開いて、藤原時平が登場。
「高麗屋」大向の大合唱!!
(秀山祭なんだからもうちょっと気をつかって欲しいわー↷)
時平の威勢に怯む梅と桜、三つ子なのに敵対して、3兄弟での喧嘩が始まろうとするときに、
神社の門前での流血騒ぎはよくなかろうと、三つ子の父の70歳のお祝い(賀の祝)が終わるまでは休戦を宣言してこの場が収まりました。
白鸚さんの藤原時平、迫力ありました。
おみ足が悪いのか、牛車にスタンバイされるときも台座が移動する感じでご自身が動かれることはほとんどないのですが、それでも梅と桜をビビらせるには十分以上の迫力でした。
いつまでもお元気でお舞台を拝見していたいものです。
賀の祝
三つ子の父親で菅丞相に仕えていた白太夫(中村又五郎)の70歳の誕生日のお祝いのために、
梅王丸、松王丸、桜丸の夫婦が揃って賀の祝いをすることになり、
お嫁さん方がかいがいしく準備をしています。
梅王丸(中村橋之助)と春(中村種之助)、松王丸(中村歌昇)と千代(坂東新悟)、桜丸(中村時蔵)と八重(中村壱太郎)
種之助春はふっくらした優しい感じで姉さんかぶりも似合っていて、いい奥さん。
新悟千代はすっきりさわやかで、お祝いの品の頭巾を白太夫にかぶせてあげる気の利いた奥さん。
壱太郎八重は、下がりの帯に花柄の振袖で、結婚しているのになんでだろうと思ったのですが、調べてみると、一番若い娘らしさを強調しての事らしいです。
白太夫と八重が氏神様へお参りに行っている間に始まる梅王丸と松王丸の兄弟げんか。
先の吉田神社での一件を根に持つふたり。
口での罵りあいから米俵を投げ合う大げんかに発展し、菅丞相が大切にしている松、梅、桜の木うちの桜の枝を折ってしまいます。
相手のせいだと擦り付け合っているところに帰宅する父白太夫。
大目玉を食らうシーンかと思いきや以外にもクールな白太夫。
あまりにも子供っぽいけんかをする兄弟はかわいらしくも思えましたが、この先にはさらなる展開が、
兄弟三人それぞれに思うところを持って帰ってきていたのでした。
梅王丸は、菅丞相のお世話をするために大宰府へいく許可を、
松王丸は時平のところで出世も決まり勘当してほしいと
梅王丸は却下。
菅丞相様のお世話なら自分でもできるので、行方知れずの菅丞相の御台様とご子息を探せと父からの命令。
松王丸は、あっさり勘当。
白太夫は激しく怒り、妻の千代から贈られた頭巾すらも床にたたきつける始末で、
梅王丸、松王丸は即座に家から追い出され、夫婦で退散。
この辺で、頭の中がこんがらがってきました。
桜丸をやっていた人が松王丸になって、車引きの時はえーっと誰だっけ?
新悟ちゃんは八重じゃなかったっけ?みたいな感じです。
ダブルキャストはいいのですが、同じ役者さんが同じ役をやり続けてほしかったなと思いました。
そういう意味では、朝から晩まで梅王丸をやっている橋之助は迷子にならずによかったです。
で、桜丸です。
時蔵桜丸はほかの二人が、刀を差した梅や松の模様が入ったワイルドな拵えなのに反して、
薄紫のさらっとした着物で、腰の物もなく部屋着のような格好で現れます。
桜丸は斎世親王と苅屋姫との恋を取り持ったせいで、菅丞相が流罪になったことの責任を取って切腹することを白太夫に伝えていたのです。
白太夫も悩んで、氏神様の判断を得ようとしますが、帰宅したときに桜の枝が折れていたことで、それが桜丸の運命だと悟り、
三方に乗せた短刀を桜丸に差し出します。
そんなことは知らない八重さん、狼狽してなんとか思いとどまらせようとしますが、
桜丸は短刀を腹に突き立て自害します。
時蔵桜丸が良かった。
ふわっと死に向かう感じに女形をなさる役者さんがこの役をやる意味を感じました。
すでに死を覚悟して達観している様子が表れていて、心が震えました。
かわいい振袖を着て、お父さんとウキウキ氏神様にお参りして、まさかお父さんは自分の夫の生き死にを神に問いかけていたなんて、それを思うとあまりに不憫でかわいそうすぎる。
壱太郎八重さんは後を追おうとしますが、様子をうかがっていた梅王丸夫妻に止められ、夫の分まで生きることを決意します。
この壱太郎八重が健気でいじらしくてとてもいいのです。
彼女にも責任の一端はあるわけですが、その責任を生きることで果たそうとする決意が凛として素敵でした。
そして、白太夫は菅丞相の流刑地へと旅立っていくのでした。
70のおじいちゃんがひとりで大宰府までの長旅、私は道中の事が心配です。
梅王丸夫妻や、八重、白太夫のその後が気になります。
寺子屋
いよいよ大詰め。
武部源蔵(松本幸四郎)が営む寺子屋、菅丞相の実の子菅秀才(中村秀之介)を匿っていることが藤原時平サイドに露呈し、
その首を討つように春藤玄蕃(坂東亀蔵)に命じられ、詮議、取り調べに来るという知らせが届きます。
偽の子供でその場を繕おうにも菅秀才の代役ができるような品がよく賢そうな子供はこの寺子屋にはいるはずもなく気が重い武部源蔵。
そこにタイミングよく新入生が寺入りしてきます。
品のいい整った身なりの母親千代(中村萬壽)に連れてこられる小太郎(中村種太郎)。
黒紋付に羽織袴、塗りの机と道具箱、その辺の子供とはやえらい違いです。
小太郎親子が寺入りしてきた時には武部源蔵は不在なので妻の戸浪(片岡孝太郎)が対応していました。
寺子屋で手習をする子供たちの中、一段高いところに菅秀才。
下段に並ぶ田舎の子供に中にひときわ大きくて、年齢も行ってる、けれどどう見ても賢くなさそうな子がひとり、涎くり与太郎(市川男女蔵)
他の生徒たちが子役なのに対し、涎くりは大人の役者が勤めます。
悪さをしては手習の机の上に立たされてました。
この子が笑わせてくれる分、後の展開がより際立ってくるんだと感じました。
小太郎の母千代は、「用があるのでとなり村まで行く」と告げて、小太郎を置いていこうとします。
「わしもついていく」と駄々をこねる小太郎。
先の展開が解っていると、じわりと込み上げてくる。
子役特有のセリフ回しが余計に悲しい。
千代はとなり村へ向かい、源蔵が帰って来て、新しく寺子屋の生徒になった小太郎と対面。
菅秀才の身代わりにできそうな姿を見てあることを思いつきます。
そこへ詮議の一行がやって来てやって来てきます。
春藤玄蕃(坂東亀蔵)と手下の者たち、駕籠の中から松王丸(尾上松緑)。
松王丸だけが菅秀才の顔を知っているので、寺子屋の子供たちの顔を確認(首実検)して、菅秀才の首を帝に献上しようということです。
全員の首実検が終わり追い込まれる源蔵、意を決して奥の間へ行き首桶を持ち戻ってきます。
松王丸の前に差し出し、首を確認しこれぞ菅秀才の首と
実はこの時差し出された首は松王丸と千代の一子小太郎の首なのです。
この時松王丸はどんな気持ちでこの首と対面したんだろう。
松王丸と武部源蔵、打ち合わせをしているわけでもないのに、松王丸の子と知ってか知らずか他人の子の首をはねてしまう。
そこまでする忠義って何?
松王丸一行は引き上げていき、入れ替わりに千代が小太郎を迎えに来ます。
もう小太郎はこの世にいないわけですから、返すこともできません。
千代の背後から斬りかかる源蔵、そこへ松王丸がやって来て、
源蔵が斬った子供は、自分たち夫婦の子であることを告げます。
そして、斬られることを理解してにっこり笑って斬られたという小太郎の最後の様子を聞いて泣きながら笑う松王丸。
松緑松王丸の父親っぷりが凄かった、自分子供を源蔵に切らせ、その首を見て偽証するわけで、その源蔵の心情たるや、
しかもこの人時平サイドに寝返ったことになってたのに、身内までも騙し、菅丞相の万が一に備えていたとは、凄い策士。
松緑松王丸を観て、父性を強く感じてしまった。
忠義のために我が子の首を差し出す父親に父性も何もあるものかという気もしないでもないんだけど、この人父親だなぁと思ってしまった。
菅原伝授手習鑑 夜の部 Bプロ
Bプロは2階の東の袖の席を取ってしまったので、舞台の半分以上見えていなかったというのはAプロの記事でも申しあげたとおりですが、文字数も4000文字になろうかというので、サクッと
武部源蔵(市川染五郎)と松王丸(松本幸四郎)こちらはリアルに親子です。
Aプロ同様、松王丸の父性を強く感じました。
染五郎源蔵は、まだまだ青く固い印象で、初役だもんそうだよねという感じ。
ダメということではなく、先が楽しみという意味です。
見た目はバツグンに良いし!
親子で舞台に立って、忠義のために実子の首を差し出す父親、その子を斬る武部源蔵が息子染五郎という糸が絡まったような配役の中で、演じ切る幸四郎松王丸。
松緑さんも幸四郎さんも、いろいろあったけど、芝居の中に見える父性に感じるものが多かった寺子屋でした。
まとめ
秀山祭九月大歌舞伎通し狂言「菅原伝授手習鑑」夜の部の観劇レポートをお届けしました。
最後は駆け足になってしまいましたが、Aプロ、Bプロ感ずるところ多く観劇しました。
長文にお付き合いくださりありがとうございました。
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