2026年3月京都南座では、近松門左衛門原作・中村鴈治郎監修による『曽根崎心中物語』が上演されます。
映画『国宝』で劇中劇として重要な位置づけにあり、映画をご覧になられた方は『度根崎心中』を観てみたいと思われた方も多いのではないでしょうか?
花形歌舞伎特別公演での上演が発表されたときは、周囲がザワつきましたし、中村壱太郎、尾上右近という手の合ったコンビでの上演というのも松竹さん攻めて来たなと思いました。
映画の『曽根崎心中』と今回上演される舞台の『曽根崎心中物語』はどう違うのでしょうか?
公演概要や配役、見どころやお楽しみポイント、チケット情報などについてまとめてみました。
花形歌舞伎特別公演 演目
曽根崎心中物語
近松門左衛門 原作
中村鴈治郎 監修
物語の舞台は大坂(大阪)。
醤油屋の手代徳兵衛と、天満屋の遊女お初は深く愛し合う仲です。
生玉の社で再会を喜ぶ二人でしたが、なんと徳兵衛は友人の九平次に大切な金を騙し取られた上に、大勢の前で詐欺師扱いされるという最悪の展開に…。
その夜、天満屋に現れた九平次が徳兵衛を散々にこき下ろすのを聞いたお初は、縁の下に潜む徳兵衛に「命をかけて潔白を証明できる?」と足先で問いかけます。
それに応える徳兵衛の無言の合図――。
言葉を交わせないからこその、魂の対話。
江戸時代に実際にあった心中事件を元にしており、心中ものブームを巻き起こすきっかけとなった作品です。
曽根崎心中と曽根崎心中物語はどう違う?
今回南座で上演されるのは『曽根崎心中物語』です。
これまでの『曽根崎心中』とはどうちがうのでしょうか?
『曽根崎心中』は近松門左衛門の原作をベースにして、新作歌舞伎として1953年(昭和28年)に生まれました。
今は亡き坂田藤十郎さんがお初を勤め、その子息である中村鴈治郎さんや扇雀さん、そして孫にあたる壱太郎さんらが成駒家の芸として守ってこられました。
それを花形歌舞伎特別公演での上演に当たり、中村鴈治郎さんが監修を行い、上演時間もコンパクトにしてさらに親しみやすく『曽根崎心中物語』として上演されることになりました。
これまでの名作を下敷きにしつつ、現代の感性でブラッシュアップされる今作。
元禄時代の実話をベースにした一途な恋の純度はそのままに、より情感豊かな「究極のラブストーリー」が楽しめそうです!
花形歌舞伎特別公演 配役と登場人物
曽根崎心中物語 配役
| 天満屋お初 | 中村 壱太郎(桜プロ) |
| 尾上 右近(松プロ) | |
| 平野屋徳兵衛 | 尾上 右近(桜プロ) |
| 中村 壱太郎(松プロ) | |
| 天満屋惣兵衛 | 片岡 仁三郎 |
| 油屋九平次 | 片岡 松十郎 |
| 檜屋熊左衛門 | 片岡 千次郎 |
| 桔梗屋弥右衛門 | 片岡 孝志 |
| 伏見屋又兵衛 | 尾上 菊次 |
| 下女お玉 | 中村 翫政(桜プロ) |
| 上村 吉太朗(松プロ) | |
| 丁稚長蔵 | 上村 吉太朗(桜プロ) |
| 中村 翫政(松プロ) | |
| 女郎おゆき | 上村 折乃助 |
| 女郎お志乃 | 坂東 竹之助 |
| 女郎お春 | 中村 鴈成 |
| 天満屋内儀お紋 | 尾上 菊三呂 |
花形歌舞伎特別公演 お楽しみポイント
73年ぶりの新たな着想で描かれる物語としての曽根崎心中
今回の公演で特に注目したいのが、「物語」と銘打たれた点です。
従来の『曽根崎心中』の型を大切にしながらも、上演時間はコンパクトにしつつ、登場人物たちの心の動きや、なぜ死を選ばざるを得なかったのかという葛藤を、より親しみやすく観客に届ける演出になるとのこと。
見逃せない「天満屋、縁の下の対話」
人目を盗んで縁の下に潜む徳兵衛、その上に座るお初。
言葉を交わせない二人が、お初の足先と、徳兵衛の喉元で「死ぬる覚悟」を確かめ合う場面は情緒の極み。
この緊迫感とエロティシズムが、令和の演出でどう進化するのか、期待が募ります。
道行(みちゆき)の美学
道行とは物語の登場人物たちが、特定の目的地へと向かう道中を、音楽や舞踊で見せる演出のことですが、
お初と徳兵衛の場合は、「この世のなごり、夜もなごり……」という有名な語り出しから始まる、曽根崎の森への道行となります。
どのように表現されるのかはまだ明らかではありませんが、劇場の空間全体が二人の最期の旅路に染まる瞬間は、きっと言葉を失うほど美しいはず。
音楽や照明、そして二人の足取りが織りなす「究極のラブストーリー」のフィナーレを、心して受け止めたいですね。
中村壱太郎さん & 尾上右近さんのダブルキャスト
今回の最大の目玉は、壱太郎さんと右近さんによる「お初・徳兵衛の役替わり」です!
おふたりは、2024年2月に『曽根崎心中』で共演されています。
この時は壱太郎さんがお初、右近さんは徳兵衛を勤められました。
今回は、壱太郎さんがお初を勤めるときは右近さんが徳兵衛を、右近さんがお初を勤めるときには壱太郎さんが徳兵衛をという具合に、男女の役が入れ替ります。
これはとてもレアなケースです!
中村壱太郎さんにとって「お初」は、祖父である坂田藤十郎さんが生涯をかけて磨き上げた、成駒家にとって宝物のようなお役。
そのお初はもちろんですが、今回は徳兵衛にも初挑戦されます。
可憐さと芯の強さを併せ持つお初と真っ直ぐすぎる徳兵衛。
壱太郎さんが、舞台の上でどんな「命の輝き」を見せてくれるのか、一瞬たりとも目が離せません。

尾上右近さんの魅力は、立役も女方も魅力的に演じる兼ねる役者であること。
今回のお初は初役となり壱太郎さんに教わるとのこと、前回徳兵衛を勤めた時は壱太郎さんの父中村鴈治郎さんの教えを受けたとのことです。
成駒家のDNAが右近さんを通してどんな風に発せられるのかが楽しみです。
二人の強い絆から生まれたこの企画、どちらのパターンも観ないわけにはいきませんね!

上方歌舞伎を支える若き実力派の競演
京都南座で上演される上方の歌舞伎という事もあり、脇を固めるキャストも上方の俳優さんが多く配されています。
■ 片岡松十郎さんの上方歌舞伎の骨太な力強さ
片岡松十郎さんは、徳兵衛から金を騙し取り、衆人環視の中で蔑み、ふたりを心中へと追い込む敵役です。
なかなかの男前で、口跡も良く上方若手俳優による上方歌舞伎会や勉強会では主役級を勤める実力者です。
悪役としての凄みが加わることで、主役二人の悲劇がより鮮明に浮かび上がるはず、ひそかに楽しみにしています。
■ 中村翫政さんと上村吉太朗さんのダブルキャスト
こちらも、下女お玉と丁稚長蔵を男女役替りで勤められます。
翫政さんは中村鴈治郎さなんのお弟子さんで、2006年に初舞台を踏まれました。
上村吉太朗さんは、上村吉弥さんのお弟子さんで、歌舞伎版刀剣乱舞やエヴァンゲリオン歌舞伎などで頭角を現しています。
こちらの役替りも楽しみです。
とにかく、普段は配役表にお名前が載らないような俳優さんのお名前が見られるのは嬉しいことです。

花形歌舞伎特別公演 公演概要
| 公演期間 | 2026年3月3日(火)~25日(水) | |
| 午前の部(開演~終演予定) | 11:00~13:30頃 | |
| 午後の部(開演~終演予定) | 15:00~17:30頃 | |
| 夜の部(開演~終演予定) | 18:30~21:00頃 土曜日のみ | |
| 休演日 | 10日(火)17日(火) | |
| 劇場 | 京都四条・南座 | |
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料金(税込)
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一等席 | 12,000円 |
| 二等席 | 7,000円 | |
| 三等席 | 4,000円 | |
| 特別席 | 13,000円 | |
※休演日など最新情報はhttps://www.kabuki-bito.jp/をご参照ください。
花形歌舞伎特別公演 チケットガイド
チケットのお求めは下記でどうぞ!と言いたいところですが、どちらの窓口もかなり残席数が少なくなっていますのでお早目めにお求めください。
オケピは、定価以下での譲渡を条件とした前売りを購入していた人が行けなくなったチケットを救済する掲示板です。
私もちょくちょくお世話になりますので、よろしかったら覗いてみてください。
まとめ
京都の街に桜が咲き始める3月は「花形歌舞伎」の季節です。
例年、若手の歌舞伎俳優が大役に挑む恒例の興行となります。
今年、南座での『曽根崎心中物語』ということはとても意義深いと思います。
心中ものという単なる悲劇ではなく「何があっても、この人だけは離さない」という、最高にピュアで熱い、現代にも通じる究極の愛の形を堪能出来たらと思います。

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