2025年11月、歌舞伎界に衝撃が走りました。
四代目 片岡亀蔵さんが火災に巻き込まれご逝去されたということです。
謹んでお悔やみ申し上げます。
享年64歳、屋号は松島屋です。
昭和・平成・令和と三時代にわたって歌舞伎の世界に貢献された片岡亀蔵さんを忍んで、改めて家系やプロフィール、印象に残るお役などをまとめてみました。
片岡亀蔵のプロフィールと家系
プロフィール
| 【名前】 | 四代目 片岡亀蔵 |
| 【屋号】 | 松島屋 |
| 【本名】 | 片岡二郎 |
| 【生年月日】 | 1961年9月15日(享年64歳) |
| 【出身地】 | 東京都 |
| 【学歴】 | 青山学院高等部 |
四代目片岡亀蔵(よだいめかたおかかめぞう)さん、屋号は松島屋です。
片岡仁左衛門さんの松嶋屋の系列ではありますが、別のお家です。
初舞台は4歳の時。
1965年12月歌舞伎座『忠臣蔵』の天川屋義平一子由松のお役で、本名の片岡二郎を名乗っての初舞台でした。
四代目片岡亀蔵を襲名されたのは8歳の時、1969年11月歌舞伎座『弁天小僧女男白浪』の丁稚三吉などのお役を勤められました。
名題に昇進されたのは1995年です。
家系
曾祖父の三代目片岡市蔵さんが八代目片岡仁左衛門さんの門弟だったということで、松嶋屋の系列になります。
【祖父】四代目片岡市蔵
【父】 五代目片岡市蔵
【兄】 六代目片岡市蔵
代々片岡市蔵というお名前を受け継いでこられた家系で、現在は兄の片岡市蔵さんが六代目を継いでおられます。
父の五代目片岡市蔵さんも個性的な脇役として“片市”の愛称で親しまれた歌舞伎俳優でしたが、若くして不慮の事故で亡くなっています。
主役を張るような派手な家ではないものの、この人が脇に居れば安心して芝居を観ていられる。
個性的で確かな腕のある名脇役の家系なのです。
片岡亀蔵という歌舞伎俳優
片岡亀蔵さん自身は、二代目尾上松緑さん、初代尾上辰之助さんに師事されて、芸を磨いてこられました。
その関係で若いころは菊五郎劇団に一座することも多かったそうですが、私の第一印象は中村屋のお芝居に一座されたときの個性的な声と姿です。
中村屋の印象が強かった片岡亀蔵さんですが、振り返ってみれば音羽屋の芝居にもよく出演されていました。
さらに、歌舞伎版『風の谷のナウシカ』でのクロトワや、歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』でのウラベなどなど印象的なお役を勤めてこられました。
迫力のある目とよく通るダミ声というか渋いお声で、時代物の敵役から世話物のヒトクセある親父や、ひとならざるものまで、
なんでもできちゃう芸域が広いなんて言葉では言い表せない達者な俳優さんでした。
片岡亀蔵の印象的なお役
私が観劇した中で印象に残っているお役を挙げてみます。
野田版研辰の討たれ からくり人形
十八代目勘三郎襲名の時と今年八月の納涼歌舞伎で拝見しましたが、他の配役が世代交代しているのにこの役だけは20年前と変わることなく、亀蔵さんで
古いネタのギャグを変わらず飛ばしてらっしゃいました。
結果的には私には最後の亀蔵さんのお姿となってしまいました。
仮名手本忠臣蔵 斧九太夫
今年3月に歌舞伎座で拝見しました。
元は塩谷家の家老だったのに、塩谷家がお取り潰しになるとわかったらさっさと師直側に寝返って、
床下にまで潜り込んでスパイ活動に励む、嫌な親父が斧九太夫
それがもう心底憎らしくなるくらいの斧九太夫っぷりで、仲間のふりをしながら自分だけは生き延びる方策を陰で練ってるような、見事に嫌な親父でした。
そして嫌な親父と言えば・・・
夏祭浪花鑑 三河屋義平次
夏祭浪花鑑の三河屋義平次ですよ、金に目がくらんで傾城琴浦を侍に売ろうとする親父。
その挙句娘婿の団七に殺されるというお役なのですが、このおっさんが悪だくみをしなければ団七が人殺しにならなくてもすんだのに・・・という嫌な親父
そんなワル親父は亀蔵さんお手のものです。
この国立劇場での上演の際に、歌舞伎の見方を解説するコーナーを担当されたのが、本当にお芝居好きの粋人のようで、江戸の言葉が素敵でした。
花道のすぐ横にいた私は、扇子で仰ぎながら横を通る亀蔵さんの粋なたたずまいに惚れてしまいました。
平家女護島 俊寛 瀬尾太郎兼康
中村勘九郎さんが三宅村歌舞伎として「俊寛」を上演されました。
孤島鬼界ケ島へ流罪にされた俊寛たちの赦免の使者のひとりが瀬尾太郎兼康です。
と言っても、赤面の悪い男です。
テレビで観ただけですが、インパクトありました。
本来ならば12月の南座で、仁左衛門、勘九郎がダブルキャストで俊寛を勤める際に瀬尾太郎兼康を勤められることになっていました。
それはもう拝見できない(涙)
唐茄子屋 不思議国之若旦那 蛙ゲゲコ
浅草田んぼに棲む蛙のお役です。
花魁に入れあげて勘当された息子が、改心して真面目に働こうとしているのに、吉原での遊びをそそのかす悪い蛙がゲゲコです。
ぎょろっとした目と面長の顔が蛙っぽくて、
さらに蛙の着ぐるみ着用なので、悪い蛙そのまま
素顔の片岡亀蔵さん
お役の話は尽きないのですが、素顔の片岡亀蔵さんは、
ゾンビフリークとしても知られていて、学生時代にジョージ・A・ロメロ監督製作の映画「ゾンビ」を見て好きになられたそうです。
趣味も多彩で、映画やDVDの鑑賞、美術館巡り、音楽鑑賞もお好きだったようです。
まめに更新されるブログは、亡くなった日の0時過ぎに最後の更新がされており、「美術館ナビ」で着用される衣装について語られていました。
亀蔵さんの私服姿はとてもおしゃれな方なんだろうなと拝察いたしました。
ブログの内容や文体から察するに、とても穏やかで粋なかただったんだろうなと思いました。
まとめ
2025年11月24日訪問先のご友人宅の火事が原因で亡くなりました。
享年64歳、まだまだこれからという時に神様はなんてことを(涙)
片岡亀蔵さんのお兄様の市蔵さんは、訃報が入った後も休まずに舞台に出られています。
ご心痛いかばかりかと心配ですが、12月の歌舞伎座でそのお姿を拝見できたらと思います。
片岡亀蔵さん、どうぞ安らかであられますように


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