2026年2月の歌舞伎座は「猿若祭二月大歌舞伎」が開催されております。
歴代の中村勘三郎の功績を称え、十七代目中村勘三郎が立ち上げた「猿若祭」
今年はその50周年をお祝いする興行として、豪華な俳優と演目が出そろいました。
初日を観てきましたので、観劇レポートをまとめておきたいと思います。
猿若祭二月大歌舞伎 昼の部
お江戸みやげ(おえどみやげ)
川口松太郎 作
大場正昭 演出
常陸の国から結城紬の反物の行商をしに江戸に出て来たお辻とおゆう。
お辻は倹約家で生真面目、おゆうはお酒が大好きでおおらかな人。
そんな二人がお江戸のみやげにと観た芝居で、歌舞伎俳優の坂東栄紫にコロっと行ってしまったお辻があり金を全部貢いでしまうというストーリー。
お辻は鴈治郎はん、おゆうは芝翫さん、もう最高!
あのカッコいい芝翫さんの田舎のおばちゃん役、すっかりハマってる。
そして鴈治郎はんのお辻がかわいい。
お酒を飲むと「心が乱れる」といって勧められてお飲まずにいたのに、少し口にすると勢いづいて飲んでしまい乱れてしまったお辻。
お江戸のみやげに観た芝居に出ていた役者栄紫にハマって、彼の駆け落ち資金に自分の所持金(行商の売り上げ)を全部渡してしまう。
感謝のしるしとして栄紫から渡された小袖を抱きしめる姿がいじらしくてかわいい。
お金のない色男の栄紫を巳之助さんは品が良く、その恋人お紺の種之助さんがかわいい!
お紺の継母、孝太郎さんの常磐津文字辰が意地悪でかき回す。
楽しい芝居でした!
鳶奴(とんびやっこ)
主人に頼まれて買った初鰹を鳶にさらわれてしまった奴さんが、鰹を取り返そうとする姿を描いた舞踊の演目で上演時間は8分
このおめでたい興行んに8分の独り舞で参加するところに松緑さんっぽさを感じる。
松緑さんの鍛え上げられた美脚は見逃せない!
コミカルな動きと表情、結局取り返せないというあほっぽさに8分間見入ってしまった。
弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)
猿若祭50周年を寿ぐ演目。
猿若座の前に、座主夫婦(勘九郎、七之助)名主夫婦(芝翫、福助)芝居茶屋女将(扇雀)呉服松嶋夫婦(仁左衛門、孝太郎)
芸者衆や役者集も舞台に揃って、男伊達入場(歌昇、萬太郎、橋之助、虎之介、歌之助)続いて女伊達(新悟、種之介、男寅、莟玉、玉太郎)
目のやり場に困る、じゃなくて目が足りない。
男伊達の歌昇さんから順番に女伊達の玉太郎くんまで、渡り台詞で自己紹介の名乗り。
男伊達は屋号とお名前、女伊達は屋号とお〇〇という風に、新悟さんはおしんみたいな感じで、お役のある方は自分の出るお芝居の説明も、
お寅さんはそのままだなぁとか思っていたら莟玉さんのお梅の名乗りがキュンでした。
呉服松嶋夫婦からは豪華な反物が贈呈され、旦那新左衛の門からの言葉は、子供の頃は十七代目にかわいがってもらったこと、十八代目との思い出話、そして「自分の目の黒いうちに十九代目が見たい」と、
仁左様らしく、流暢ではないちょっとカミながらのお言葉でしたが、込み上げてくるものがありました。
おっしゃる通りです!
ただ、まだまだ勘九郎でいてほしいと思ったのも事実。
舞台上の皆さんから中村屋への愛が感じられ、それを受け止める勘九郎さん、七之助さんの姿があんまりよく見えないや、、、
福助さんも舞台に立たれて、芝翫さんがフォローされて、つながりは大事だね。
幸せな気分に包まっれます。
積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
雪が降り積もる中、咲き誇る満開の桜という幻想的な舞台設定。
七之助さんは小野小町姫と傾城墨染実は小町桜の精を
勘九郎さんは関守関兵衛実は大伴黒主はを勤めます。
そして、八代目菊五郎さんの良峯少将宗貞という豪華な顔合わせ。
良峯少将宗貞の許へ恋人の小野小町姫が訪ねて来たところの宗貞と小町姫の睦まじさ、特に八代目の上品なたたずまいが印象的でした。
関守関兵衛はおおらかでおちゃめなところもありチャーミングな勘九郎さん。
でも関兵衛は天下を狙う大伴黒主なので、大願成就のために桜の木を伐採しようとするあたりから悪の片鱗が見え始めます。
ぶっかえって(正体を現して)大伴黒主になってからは迫力もたっぷりでした。
七之助さんの小野小町姫は恋人と再会できた喜びとかわいらしさに溢れて
傾城墨染実は小町桜の精になってからは、妖しい雰囲気漂う美しさ。
大きなまさかりを持つ大伴黒主と桜の枝で応戦する墨染の迫力ある立ち回りに圧倒されている間に幕。
猿若祭二月大歌舞伎 夜の部
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)陣門・組打
『一谷嫩軍記』といえば『熊谷陣屋』はよく上演されるので何度か観たことがありますが、その前段に当たる『陣門・組打』は上演機会が少ないので、今回の舞台を観て前に観たときのことを思い出しました。
で、今回『陣門・組打』を観て、その先のストーリー『熊谷陣屋』につながり、その内容がぐっと入って来る結果になりました。
通しで上演してほしいな。
勘九郎さんは大熱演で、『熊谷陣屋』の直実も観たい。
勘太郎くん、変声期の影響もあり声はカスカスしていたけれどそれがいい感じに小次郎のつらさを増幅して悲しみを誘ったし、大人の役者への階段を上っているなと強く感じました。
遠見の熊谷、遠見の敦盛は、海の中遠くまで行って戦いを繰り広げる熊谷と敦盛の様子を同じ衣装を着けた子役が演じるのですが、立派に勤める種太郎・秀之介兄弟には、母のような心境になりました。
死に行く玉織姫の新悟さんの哀しい姿に重なるもうひとつの胴体も・・・
ああ、こんなつらいことをして熊谷は陣屋に戻って来たのかと思うと泣けました。
難しいお話に思って(漢字が多いし、文字ずらも固いし)しまいがちですが、内容は理解できなくても、馬に乗って出てくるし、馬と一緒に浜辺から海に入っての戦闘シーンなど視覚だけでも楽しめるので、ビギナーの方にもおすすめです。
いつか見ることになる『熊谷陣屋』のためにも観ておいた方がいいです!
雨乞狐(あまごいぎつね)
大沼信之 作
十八代目中村勘三郎に宛て書きされた、義経千本桜に出てくる子狐が干ばつに苦しむ人々を助けるために雨乞いをするという舞踊の演目。
40分間踊りづめ、動きづめの所作事(踊り)なので、勘九郎さんと七之助さんが役を分けて勤めます。
私は初めて拝見しましたが、勘九郎(当時は勘太郎)が右膝靭帯断裂の重傷を負ったといういわくつきですが、中村屋にとっては大切な演目です。
今回はふたりで役を分けるとはいえ、激しい動きが続く演目ですので私の心が叫んだのは「お願いーニーパッドしてー」でした。
あれだけだんだん膝を打ち付ける、負担がかかる踊り、本当にタフな踊りです。
今後の役者人生のためにも保護とケアをしてほしいと心から願っています。
奈落からぴょーんと飛び出してくる勘九郎さんの身体能力の高さと、
柳の枝に飛びつこうと努力する蛙の姿を描いた小野道風の世界観。
かわいい七之助さんの狐にパワフルな雨乞い巫女、
あやしげな狐の嫁入りで感じた一座の結束力など、
ファンタジックな舞台の上に、いろんなことを感じる「雨乞狐」でした。
これを独りでやる予定だった鶴松さん、兄さん達の奮闘を観てしっかり学んでほしい。
梅ごよみ(うめごよみ)
向島三囲堤上の場より深川仲町裏河岸の場まで
為永春水 原作
木村錦花 脚色
『梅ごよみ』私の大好きなお芝居です。
歌舞伎沼にハマりつつあった私が、歌舞伎座に通うという事をしてしまった演目です。
その時は仇吉・玉三郎さん、米八・勘三郎(当時は勘九郎)さんという顔合わせでした。
芸者の仇吉と米八が、ひとりのいい男丹次郎を取り合うというお話です。
七之助さんの仇吉が玉様風味で、間違いないだろうというのは想像できたけれど、時蔵さんですよ時蔵さん、もう最高です。
襲名後の時蔵さんは毎回毎回私の時蔵記録を更新してくれるんですけど、今回もでした。
七之助仇吉が「い~いおとこだねぇ」と一目ぼれしてぐいぐいくる中、その男と暮らしている米八の心穏やかならざる心情が見事に出ていて、ちょっと勘三郎さんを感じさせてくれるところもあり、大好き!
お蝶ちゃんという許嫁がいながら二人の芸者にフラフラする丹次郎も実に丹次郎で、隼人さん、こういうのほほんとしたお役も会うなぁ
最後にちゃっかり丹次郎と一緒になるのは許嫁のお蝶ちゃんってところも、しっかり者の莟玉さんらしくて楽しめました。
私的には新時代の『梅ごよみ』キター\(^o^)/って感じです。
今月中に再見します!!
まとめ
2026年2月歌舞伎座の「猿若祭二月大歌舞伎」の初日を拝見してきましたので、観劇レポートをまとめました。
この興行で、中村屋兄弟は背中を見せまくっていると思いました。
本来はこの場にいて襲名する予定だった鶴松さん、その鶴松さんに背中を見せまくっていると思います。
復帰を待つ方も多いと思いますのでどうか舞台に戻ってこられますように。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今月の歌舞伎座お勧めなので、是非お運びください。


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